糖尿病
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糖尿病患者の血糖コントロール時および白内障手術時の血小板凝集能の変化
小野 百合対馬 哲三沢 和史工藤 守中川 昌一
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1988 年 31 巻 8 号 p. 681-688

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抄録

臨床上, 網膜症が進展することをしぼしば経験する長期罹病糖尿病患者の血糖是正時および眼科手術時の病態を血小板凝集能, アラキドン酸カスケードの面より検討し以下の結果を得た.1) 急速な血糖是正時に, ADP, Collagen, Epinephrine, PAFによる血小板凝集能は全て亢進を示した.2) 手術時の血小板凝集能は, 術中は有意に低下し, その後徐々に亢進して, 翌日には術前に比し亢進を示した.TXB2, 6 keto-PGはともに術中に上昇したが有意ではなく, TXB2/6 keto-PG比はむしろ低下した.3) 術前に血小板凝集能が亢進していた群は, 術後, 眼底所見の増悪する傾向を示した.4) 以上の所見は, 糖尿病患者が, 急速な血糖是正や手術を機に網膜症等の合併症の増悪をきたす頻度が高いことと関連性があると推定される.5) 血小板凝集能亢進時, すなわち血糖是正時および手術後に血液粘度は逆に低下し, 体内の複雑なHomeostasisの存在を示唆した.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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