抄録
インスリン依存型糖尿病 (IDDM) 患者49名, インスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者127名, 健常者112名において膵島細胞膜抗体 (ICSA) と抗甲状腺抗体 (ATA) を測定し, うち70歳以上の高齢者60名に75g経ロブドウ糖負荷試験 (OGTT) を施行した.ICSAは間接螢光抗体法により測定した. (1) IDDMでは, ICSAは発症1年未満で高率 (50%) に検出されたが, 罹病期間5年以上では全例陰性となった. (2) NIDDMおよび健常者では加齢とともにICSA陽性率が上昇し, 70歳以上ではNIDDMで33%, 健常者で37%に達した. (3) 高齢者60名ではIDDMの場合とは異なり, ICSA陽性はATA陽性と高率に一致するものの, 75g OGTTによる耐糖能異常とは相関性を認めなかった.以上より, 高齢者でのICSAは加齢に伴う免疫異常により出現し, 膵ラ氏島障害性を有さないことが示唆され, IDDMでのICSAとはその性状を異とするものと考えられ, ICSAの多様性の存在が強く示唆された.