糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
糖尿病性ケトアシドーシスが急性肝障害の原因と考えられたIDDM (Insulin-Dependent Diabetes Mellitus) の1例
黒木 巳賀永渕 正法山根 章敬安西 慶三中野 修治石橋 大海柏木 征三郎仁保 喜之
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 34 巻 3 号 p. 243-249

詳細
抄録
糖尿病性ケトアシドーシスが急性肝障害の原因と考えられた興味深い症例を報告する.症例は36歳女性31歳時IDDMの診断をうけた患者で, インスリン注射の自己中止により糖尿病性ケトアシドーシスを発症した.入院後も経口摂取不能, インスリン不足のため, pH7.2程度のアシドーシスが約3週間持続し, 肝腫大とともに急激な高度のトランスアミナーゼの上昇をきたした.九大一内科転院後, 十分量の速効型インスリンの持続点滴静注によるアシドーシスの改善とともに肝機能は正常化した.肝炎ウイルス関連マーカーは陰性で, 1年半の経過観察中も肝機能の悪化は認めなかった.生検肝組織像は, リンパ球浸潤は軽微で, 小葉中心性の脂肪変性, 胞体ならびに核の空胞化が主体であった.以上より, 長期にわたって持続した糖・脂質代謝異常に加え, 今回の糖尿病性ケトアシドーシスによる肝細胞の代謝障害が, 肝細胞障害とそれに伴う血清GOT, GPT上昇の原因と考えられた.
著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top