抄録
プロラクチノーマに糖尿病を合併した症例を経験し, ブロモクリプチン投与前後における耐糖能の変化を検討した. 症例は22歳の男性. 1992年5月, プロラクチノーマのため下垂体腺腫摘出術を施行. 同年7月上旬より易疲労感, 多飲, 多尿が出現し, 糖尿病と診断し入院. 入院後, 糖尿病は食事療法と経口剤にて治療を開始し, その後食事療法と運動療法のみにて良好な血糖コントロールが得られた. 下垂体には2×1cmの腺腫が残存し, 血漿プロラクチン値は110.1ng/mlと高値であった. ブロモクリプチン投与を開始し, 血漿プロラクチン値は9.7ng/mlへ低下した. ブロモクリプチン投与前後で75g OGTTと20g IVGTTを行った. 75g OGTTではブロモクリプチン投与中で, 血糖値は改善し, 血漿インスリンの反応は増加した. 以上より高プロラクチン血症がインスリン分泌に影響を及ぼすことが示唆された.