糖尿病
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少量アスピリンが2型糖尿病患者の血中可溶性接着分子濃度に及ぼす影響
松本 一成世羅 康徳植木 幸孝三宅 清兵衛
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2001 年 44 巻 8 号 p. 677-681

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抄録

アスピリンは, 動脈硬化症に対する抗血小板療法として糖尿病患者にも広く用いられている. 細胞接着分子は, 動脈硬化症の発症・進展において重要な働きをしていると考えられているが, 接着分子発現に対するアスピリンの効果は, in vivoでは未だ十分な検討をされていない. そこで, われわれはアスピリンの効果を接着分子に焦点をあてて検討した. 28例の2型糖尿病患者のうち, 14例の無症候性頚動脈硬化症症例に少量アスピリン (81mg/日) を12週間経口投与した (アスピリン群). 年齢・性・頚動脈硬化度が同等の14例を対照群とした. 研究期間中は, 糖尿病・血圧・脂質の治療を一切変更しなかった. 両群ともに12週の治療前後で測定したHbA1c, 総コレステロール, 中性脂肪, HDLコレステロール, および血圧には有意な変動は認めなかった. 可溶性接着分子では, intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1), vascular cell adhesion molecule-1 (VCAM-1), E-selectinは, 対照群において, 治療前後で有意な変動は認めなかった. 一方, アスピリン群においてはIcAM-1が12週治療後に有意に減少した (214.2±16.1to193.0±14-3ng/ml, p<0.05). VCAM-1とE-selectinは, アスピリン治療前後で有意な変動を示さなかった. 以上のことから, アスピリンにはICAM-1の発現抑制作用があり, 抗動脈硬化作用の一部を担っている可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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