日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌
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局面転換を考慮した確率金利モデルによるポートフォリオの金利リスク評価とその流動性預金への応用
室町 幸雄
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2021 年 64 巻 p. 46-70

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抄録

本稿では,局面遷移を考慮した確率金利モデルを用いた資産・負債の金利リスク計測について提案し,数値例を示す.もとにするモデルは,金利過程のパラメータ値が局面に依存するものとして,局面遷移過程を有限状態連続時間のマルコフ連鎖で表現した確率金利モデルであり,モンテカルロ・シミュレーションを用いて将来の金利シナリオを発生し,資産・負債の金利リスクを数値的に計測する.提案モデルは過去の金利動向の特徴を踏まえたもので,無裁定理論を用いて将来の金利期間構造を導出すれば任意の満期の金利に依存する資産・負債モデルの構築が可能である.また,モンテカルロ・シミュレーションを用いるので,同時点の金利だけでなくタイムラグを考慮したモデリングも可能であるなど,さまざまな柔軟性を備えている.数値例からは,このモデルでは将来金利がマイナス方向に深く進まず,まるで金利に下限があるかのように振る舞うことや,現在までの金利動向を維持しつつ,極端な金利上昇シナリオ発生の可能性を織り込んだリスク量の算出が可能であることがわかった.また,応用例として流動性預金の金利リスクを計測したところ,現在までのトレンドを維持しつつ極端な事象も発生させられるモデルであることも確認できた.

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© 2021 日本オペレーションズ・リサーチ学会
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