図書館界
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公立図書館のあり方を考える(<誌上討論>「現代社会において公立図書館の果たすべき役割は何か」)
塩見 昇
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2004 年 56 巻 3 号 p. 169-174

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抄録

大学で図書館学の授業をするようになって30数年,司書講習を含めると40年近くになる。その初期の頃には,受講生が抱く「図書館」ということでのイメージは,まず間違いなく学生などごく限られた人たちが勉強する場であった。座席借り,長時間利用,閲覧が図書館利用の一般形であり,普通の市民にとって図書館は身近な存在ではなかった。この4月末に大阪市立図書館の旧・現職員の親睦会が開かれた際,出席した松岡享子さんが在職当時(1960年代初期)の小中学生室の利用にふれて,「1日の貸出しが2桁になったことを喜んで,それを日誌に書きとめた」と話され,図書館からの現況報告と重ね合わせて出席者に深い感慨を覚えさせた。いま,大阪市立中央図書館では,平日でも1日1万数千冊の貸出しがあり,500〜600件のレファレンスの対応に大わらわである。2003年度には広がる利用とサービスの一層の充実を図るため,大規模な職員体制の見直しをしたことが報告された。日本で最大規模の公立図書館であり,非常に活気があって忙しい図書館における動きであるが,大なり小なり昨今の公立図書館に共通する状況であり,課題であろう。今回編集委員会が提起した3つの論点は,こうした日本の公立図書館の当面する課題に対して,『市民の図書館』が今も図書館づくりの基本的な拠りどころとして有効か,これからの図書館像とその展開がどう描けるのか,を問いかけている。以下,できるだけ提起された枠組みにそって私見を述べ,誌上討論への素材を供したい。

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© 2004 日本図書館研究会
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