観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
未来を生み出す実践としての観光とヘリテージ
トルコ地中海地方「リュキアの古道」トレッキングルートの事例から
田中 英資
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2025 年 13 巻 1 号 p. 77-92

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抄録
近年、様々な主体のパフォーマンス、観光に関わる制度やインフラ、メディアなどの多元的な関係性に着目し、特定の観光イメージが実践を通して具現化していくプロセスとして観光を捉える研究が進んでいる。観光を通して新たな現実がつくり出されていく点で、観光は未来を志向する実践である。一方、ヘリテージ(heritage)に関する研究では、ヘリテージとは有形・無形の過去の痕跡に何らかの意義が認識される社会的プロセスと捉えられるようになっている。将来の世代の利益のために受け継ぐという発想を前提に、ヘリテージとされたものを保存するという意味で、ヘリテージも未来を生み出す実践である。観光がヘリテージを生み出し、ヘリテージが観光を生み出すという相互作用として観光とヘリテージの関係を考えることは、未来を生み出す実践としての観光とヘリテージがいかに交錯し、その結果としていかなる現実が生じているのかを捉えることにつながる。本稿では、トルコ地中海地方における観光産業の発展と考古遺跡の保存・活用の状況を事例に、未来を生み出す実践としての観光とヘリテージの特徴を検討し、その相互作用が地域社会にいかなる変化をもたらしているかを示す。
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