観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
中国の都市観光振興における近代歴史的遺産の意義と活用方策
青島市の事例を中心に
張 海燕
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2018 年 6 巻 2 号 p. 141-152

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抄録

21世紀に入り、中国は「観光大国」に発展し、特に都市観光を急速に発展させた。青島市は、中国の都市観光の競争ランキングにおいて上位を占めている。本稿の課題は、青島市の事例を分析し、中国の都市観光の振興における近代歴史的遺産の意義と活用方策を検討することである。青島市は、19世紀のドイツ租借時代に建設された歴史的価値の高い近代歴史的建造物を合理的に保存・活用し、伝統的な都市文化や観光の自然的資源等を融合し、独自の都市景観を作り上げ、観光客を急増させた。この点で、本稿は観光資源における自然的資源ではなく人文的資源、特に歴史的遺産の観光活用を中心に分析を行った。
なぜなら、青島市は中国における近代歴史的遺産の保存・観光活用の成功事例であるからである。中国では、1840年代以降の近代歴史的遺産は植民地統治時代の「負の遺産」と捉えられ、大連市等では破壊が進んでいる。しかし、青島市の近代歴史的遺産、すなわち旧ドイツ膠澳総督邸、「万国建築博物館」と称される八大関建造物群、青島ビール工場等は、「青い空、透き通った海、赤い屋根」という都市景観のコアとして観光客の誘致に成功し、都市観光を振興させたのである。

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