観光学評論
Online ISSN : 2434-0154
Print ISSN : 2187-6649
ツーリスト・アクセス
「アクセス」概念が拓くツーリスト像の検討に向けた理論的整理
石野 隆美
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 9 巻 2 号 p. 79-92

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抄録

ツーリストに「なる」こと、あるいはツーリストで「ある」ことはいかにして可能となっているのだろうか。本論文は、「ア クセス」を従来のツーリスト理解を相対化するための概念道具としてとらえ、これを観光研究に導入する可能性とその展望について議論することを目的とする。まず、モビリティと社会的排除の問題として検討されてきた「アクセス」の議論をモビリティ・スタディーズの既存研究にもとづいて整理する。次いで、すでに「アクセス」の概念を議論に取り入れてきた観光研究の蓄積を検討し、その課題と可能性をまとめながら、「アクセス」概念を位置づけていく。事例としてフィリピン・マニラの旅行会社において進行する訪日観光ビザ申請の手続きを取りあげ、実際に人びとがツーリストに「なる」ために経験する「アクセス」のプロセスの一端を考察する。
ツーリストに「なる」ために経験されるプロセス(「ツーリスト・アクセス」)への着目は、ツーリストが決して無条件に成立する存在ではなく、つねにその周囲を取り巻いている種々の制約や条件に関係づけられた存在であることを可視化させてくれる、有用な手がかりとなるものである。

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