抄録
東京・島しょ地域(有人島11 島)を対象に行ったアンケート調査によれば,産科医が常駐し分娩管理可能な島は大規模離島である伊豆大島と八丈島の2 島のみであり,産科医の常駐していない中・小規模離島における妊婦健診は,主に診療所医師(総合医)が担当していた.島外で出産する妊婦は,早い時期からの出島を余儀なくされ(妊娠28 週から36 週),出産に関わる支援体制は各島で違いがみられた.伊豆大島では年々出産数が減少しているのに対し,八丈島では里帰り分娩を含め島内での出産が増加していた.
島しょ地域からの母体搬送症例は最近の10 年間で60 件,そのうち7 割は伊豆大島が占めていた.収容先は都立大塚病院が14 件と最多で,全体の2 割,妊娠初期・早産例の4 割を占めた.都立大塚病院への母体搬送症例(14 件)のうち8 件はそのまま分娩に至り,超早産(28 週未満)での分娩が3 件,早産(37 週未満)での分娩が3 件であった.
島しょ地域から都立大塚病院への新生児搬送症例は,過去31 年間で9 件であるが重症例(死亡例、脳性麻痺例)が3 件含まれていた.新生児搬送の所要時間は母体搬送に比して長時間を要しており,現地での医療スタッフにおける適切な新生児蘇生法のスキル習得および緊急薬剤の備えが重要である.
島しょ地域における周産期医療体制は,安全・リスクを重視して島外分娩へシフトしていくべきか,それを踏まえた上で島内分娩を維持していくべきか熟慮すべき課題である.