抄録
東京都離島発症の急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome:ACS)に対する現地医療機関でのtPA (tissue plasminogen activator)投与の有効性について検討した.
2005年4月1日から2009年3月31日までにST上昇を伴うACSの診断で緊急ヘリ搬送された連続32例を後ろ向きに検討した.32例中,男性24例で平均年齢は64.4(±13.4)歳であった.tPA投与群は11例,非投与群は21例であった.tPA投与群の病変部位は,左前下行枝(LAD)近位部病変が64%と,非投与群の42.8%よりも多く,tPAはより重症例に投与されていた.心臓カテーテル検査での初回造影では,TIMI 3 以上の良好な血流が得られていたのはtPA投与群の36%で,非投与群では23%にとどまった.しかしながら,血流の改善は認めても血中心筋逸脱酵素値や心エコーでの左室駆出率は有意差を認めなかった.
その原因としてtPA投与群では重症例が多く,現地医療機関受診からtPA投与までに平均2時間を要していることも考えられた.また,tPA投与群においても出血性合併症や難治性不整脈などの副作用の増加はなかった.
離島発症のACS症例において現地医療機関でのtPA投与の安全性が示された.その効果を発揮するために適応症例には迅速に投与する必要がある.