日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-062
会議情報
発がん性
トログリタゾンに対するrasH2マウスの発がん感受性
*金 美蘭高橋 美和本 光喜六車 雅子剣持 佑介河野 太一三森 国敏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
目的】PPARγアゴニストやα・γのデュアルアゴニストには、長期発がん性試験において多臓器発がん性を示すものがある。しかし、p53ノックアウトマウスではその発がん性は検出できないとのことから、米国FDAは、遺伝子改変マウスではこれらの化合物の発がん性評価は困難であるとの見解を示した。一方、血管肉腫が自然発生するrasH2マウスは遺伝毒性発がん物質のみならず非遺伝毒性発がん物質にも感受性を示すことが知られているが、PPARγおよびデュアルアゴニストについての発がん感受性については検討されていない。そこで、長期発がん試験において血管肉腫の誘発が報告されているPPARγアゴニストtroglitazoneのrasH2マウスにおける発がん感受性を検討するため以下の実験を行った。【方法】7週齢、雌雄のrasH2マウスに、troglitazone 0、3000、6000ppmを26週間混餌投与した。解剖時には肝臓および褐色脂肪重量を測定し、遺伝子発現解析用サンプルとして脾臓、皮下に認められた腫瘤の一部を採取した。また、全身諸臓器の病理組織学的検索を実施した。【結果】Troglitazone 3000ppm群の雄1例、6000ppm群の雌3例が実験期間中に死亡した。解剖時の重量測定では、肝臓および褐色脂肪重量が有意に増加した。組織学的には、troglitazone投与群の雄全例と雌数例では、肝細胞壊死を伴った小葉中心性肝細胞空胞変性が認められた。褐色脂肪では、用量依存性に細胞質内の脂肪滴が大型化する傾向が認められた。脾臓や皮下に認められた暗赤色腫瘤は、いずれも血管腫/血管肉腫であり、雌の6000ppm群では6例に血管系腫瘍の発生が認められた。血管系腫瘍についての遺伝子発現解析では、ras/MapKの活性化血管新生関連遺伝子や細胞周期、細胞増殖関連の遺伝子などの発現増加が認められた。
著者関連情報
© 2006 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top