日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY2-4
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酸化ストレスと毒作用発現
酸化ストレスとグルタチオン S-トランスフェラーゼ
*安仁屋 洋子
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抄録

近年酸化ストレスが種々の病態や老化に関与していることが明らかになりつつある。生体に取り込まれた薬物は代謝酵素により代謝される過程であるものは活性酸素・フリーラジカルを発生し、細胞障害を引き起こす。薬物代謝酵素の中には活性酸素・フリーラジカルにより変化をうけるものがあるが本研究では酸化ストレスによるGlutathione S-transferase(GST)の活性化を中心に述べる。GSTには可溶性画分に存在するGSTcと膜結合性のMGST1があり、両者は異なる遺伝子ファミリーに属する。MGST1はホモ3量体で、一サブユニットあたり1個のSH基を有し、このSHの修飾により活性化される。In vitroではMGST1は過酸化水素、ペルオキシナトライト、銅由来の活性酸素により活性化されことが確認されている。MGST1はP450系や脂質過酸化反応で生じた毒性代謝物(アセトアミノフエン、ジメチルニトロソアミンの代謝物や過酸化脂質の代謝物の4_-_ヒドロキシー2_-_ノネナールなど)をグルタチオン抱合する解毒酵素として機能するが、同時にこれら代謝物により活性化される、いわゆるup-regulation を受ける。また、ガラクトサミン・リポポリサッカライドによる酸化ストレス性肝障害ではGSTcは血液中に遊離されるがミクロソームMGST1はMGST1ダイマーを生成して活性化される。この他MGST1は摘出肝の虚血・再灌流、チトクロムP_-_450誘導剤、加齢による酸化ストレスで活性化される。一方、ミトコンドリアのMGST1はミトコンドリア内で発生した活性酸素で活性化される。MGST1はまたペルオキシダーゼとして膜の過酸化脂質を無毒化する作用を有する。これらのことからMGST1は酸化ストレス時に活性化され、脂質過酸化物の解毒を促進し、膜保護作用を担うことが示唆される。

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© 2006 日本毒性学会
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