日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-115
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トキシコパノミクス
カニクイザルにおける抗体投与によるInfusion Reactionに関与するタンパク質発現変動解析
*藤田 卓二小島 健介林 砂緒鈴木 睦川原 潤一
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抄録

【目的】Infusion Reaction (IR)は抗体投与による副作用であり、主症状として投与後24時間以内に発現する血圧低下、発熱等のアナフィラキシー様の反応が知られている。IRの発現時には炎症性サイトカインの上昇を伴うことがあるが、詳細な発現機序については不明な部分が多い。今回、我々は抗体を投与したカニクイザル血漿を解析して、IR様症状に伴って変動するタンパク質を同定し、IR発現機序の推定を試み、また、IR様症状の発現を素因(個体差)により予測可能かどうかを検討した。【方法】抗体を投与し、IR様症状が認められたカニクイザル2匹と、認められなかった2匹の血漿を用いた。アルブミン除去した血漿をトリプシン消化し、nanoLC/Linear Trap-TOF (NanoFrontier L、(株)日立ハイテクノロジーズ)によりMS/MS解析を行い、タンパク質を同定した。さらに、同一個体で抗体投与前後において発現量が変動したタンパク質及びIR様症状の有無で発現量が異なったタンパク質を、MS/MS面積の比較により選択し、IR様症状との関連性を解析した。【結果】MS/MS解析により約200個のタンパク質が同定された。抗体投与前には発現しておらず、投与後にIR様症状が認められた群においてのみ増加したタンパク質は症状の発現に関与している可能性が考えられた。一方、症状が認められなかった群でのみ、抗体投与後に増加したタンパク質は症状の抑制に関与している可能性が考えられた。また、両群で投与前のタンパク質発現量を比較し、発現量が異なっていたタンパク質は、IR様症状を発現する素因と関連があることが推定された。これらタンパク質の発現変動とIR様症状発現機序との関連について解析を進めている。今後さらに例数を増やす必要性があるが、本手法はInfusion Reactionの発現機序を明らかにする上で、有用であると考えられる。

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© 2006 日本毒性学会
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