日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-148
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その他-2
ドブネズミに蓄積する環境汚染物質の解析と生体への影響
*神谷 知未高菅 卓三谷川 力石塚 真由美藤田 正一
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抄録
【目的】陸生野生哺乳類に対する環境汚染物質の生体影響を調べた研究報告は極めて少ない。本研究では身近な野生動物であるドブネズミの汚染とその生体影響を検討することを目的とした。【方法】ドブネズミは実験動物ラットと同種のため、ラットを対照として用い、北海道のゴミ埋め立て処理場、東京の新宿駅、池袋駅周辺、大阪の梅田駅、難波駅周辺より採集した。水晶体重量より週齢を推算し、性成熟後の雄固体を解析に用いた。肝臓に蓄積するダイオキシン類、臭素系難燃剤、有機塩素系農薬について化学分析を行い、クラスター解析を用いて主要な汚染源の推測を行った。また、精巣への影響について、Affimetrix社のGene chipを用いて発現遺伝子の変動についてスクリーニングをし、変動を同定した遺伝子の発現量測定をリアルタイムPCRで行い、発現量と環境汚染物質蓄積との関係を個体ごとに解析した。【結果および考察】ダイオキシン毒性換算当量(以下TEQ)が顕著に高い新宿由来の1個体の精巣において、テストステロン合成に重要な酵素CYP17,CYP11AおよびStAR蛋白の明らかな低値が見られた。また、CYP1A1においては全ての個体の精巣で発現が誘導された。また、遺伝子スクリーニングの結果から、実験動物ラットの精巣に比べて、アポトーシス関連遺伝子の変動も観察され、精子形成のエネルギー産生に重要な遺伝子の上昇などが認められた。今回、精巣に発現するステロイド代謝関連遺伝子の変動から、食物連鎖の下位に位置する野生げっ歯類においても環境汚染物質暴露の影響が現れている実例が存在することが明らかになった。
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© 2006 日本毒性学会
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