日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-194
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毒性発現機序
Cytosine arabinosideは胎盤迷路部栄養膜細胞にp53依存性のアポトーシスを誘導する
*山内 啓史上塚 浩司中山 裕之土井 邦雄
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抄録
胎盤細胞のアポトーシスは、子宮内胎児発育遅滞など、妊娠異常の発生に関与すると考えられている。我々はこれまでの研究で、DNA傷害性化学物質である(Ara-C)を妊娠ラットに投与すると胎盤迷路部栄養膜細胞でアポトーシスが誘導されることを明らかにした。本研究では、DNA傷害時に活性化され、アポトーシスを誘導する癌抑制遺伝子p53に着目し、Ara-Cによる胎盤アポトーシスの機序を検討した。妊娠13日のラットにAra-C(250 mg/kg i.p.)を投与したところ、胎盤でp53およびリン酸化p53タンパク質の発現上昇が認められた(ウェスタンブロット法)。また、p53のリン酸化を誘導するリン酸化Chk1のタンパク質発現上昇も認められた。さらに、p53により転写誘導されるアポトーシス促進性の遺伝子、noxapumaのmRNA発現上昇も認められた(RT-PCR法)。加えて、p21cyclin G1などのp53転写標的遺伝子の発現上昇も認められた(cDNA microarray法)。次に、p53ノックアウトマウスにAra-C(100 mg/kg i.p.)を投与したところ胎盤のアポトーシス誘導は強く抑制された。これらの結果から、Ara-Cに暴露された胎盤において、Chk1およびp53のリン酸化による活性化、次いでその下流のアポトーシス促進遺伝子の発現誘導という一連のDNA傷害反応経路の関与が明らかになった。以上より、p53とその関連因子が、胎盤栄養膜細胞のアポトーシスを通じて、妊娠関連疾患の病態発生に関わっている可能性が示唆された。
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© 2006 日本毒性学会
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