日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: WS1-3
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小児用医薬品開発における幼若動物毒性試験
新生児動物における毒性感受性
*長谷川 隆一
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抄録
医薬品の安全性を推定するためのげっ歯類を用いた前臨床試験では、通常、動物の5-6週齢から投与が開始され、また、生殖試験では交配前から継続して投与されるものの、出生から離乳までの期間(新生児期間)は被験物質を直接投与しない。しかし、新生児期間は各器官が急激に発達する時期で、多くの機能が未成熟であることから、外的刺激に対する感受性の高い可能性が考えられるため、新生児における毒性感受性を検討した。なお、本研究は一般的に化学物質に対する新生児感受性を検討する目的で行ったもので、小児用医薬品の安全性評価を想定したものではないことに留意願いたい。
厚労省の既存化学物質安全性点検計画で実施中のラットを用いた28日間反復経口投与毒性試験(5週齢から投与:若齢ラット)を比較対象とし、独自に生後4日齢から21日齢まで投与する新生児試験法を設定した。両試験は被験物質のロット番号、使用動物(SD SPFラット)および供給業者を同一とし、投与液の調製、投与経路、観察・検査項目なども同一の方法によりGLP下で実施した。対象物質は研究を開始した当時、内分泌かく乱作用が疑われていたフェノール類を中心に18物質を選択した。毒性評価に当たっては、同様にGLP下で実施した用量設定試験の結果も含めて判定したため、推定無毒性量(pNOAEL)及び推定確実中毒量 (pUETL)の2つの毒性指標を新規に定義して本研究に限定して用いた。その結果、pNOAELあるいはpUETLの比(若齢ラット/新生児ラット)は、それぞれ6または5物質で2倍未満(新生児ラットで低感受性または若齢ラットと同等)、11物質で2-8倍(新生児ラットで明らかに高感受性)であった。しかし、1物質については新生児ラットでのみ腎毒性が発現した。以上の結果から、小児用医薬品の安全性を確保するためには適切な未成熟動物を用いた毒性試験の実施が必要であると考えられる。
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© 2006 日本毒性学会
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