抄録
日本製薬工業協会・基礎研究部会のタスクフォース12 (非臨床試験の信頼性確保)では、効果的な信頼性の確保はどうあるべきかの観点から、議論を重ねてきた。その検討の手段として、日本と欧米のGLP基準およびその運用方法について調査したところ、日米欧のGLP(Good Laboratory Practice)基準には大きな違いはないものの、その基準の運用方法においては、いくつかの大きな違いが見られることが判明した。
この違いは、その国の医薬品の承認制度に起因している事情もあり、一概には、単純な比較はできないものの、医薬品の開発の目的が人の健康と福祉に寄与する点を考慮すれば、可能な限り、効果的な信頼性の確保の事例として国際的な運用を評価することは必要である。
GLP基準運用の違いのひとつがGLP組織体制である。欧米では会社組織そのものがGLP組織と一体化しており、会社組織の中でGLPの責任分担がなされている。これに対して、日本では会社組織とは別に、運営管理者、試験責任者や信頼性保証部門責任者を中心としたGLP組織の構築が求められている。このことは結果的に会社組織とGLP組織の2重構造をもたらしている。さらに欧米では、運営管理者や試験責任者の責務の一部を他の者に委託することができるが、日本ではそのことは許容されていない。
これら以外にも主要なGLP運営上での違いがあるので、日本と欧米のGLPの運用上の違いを認識した上で、効果的な信頼性確保のあり方について、本GLPセミナーで提言し、考える場となることを期待する。