日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY1-1
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薬剤性腎障害の発症機序と防御
慢性腎臓病対策からみた薬剤性腎障害対策の課題
*菱田 明藤垣 嘉秀
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キーワード: 慢性腎臓病, 急性腎障害, GFR
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抄録

薬剤性腎障害関連の課題としては、学術的には腎障害の機序を明確にし、その早期発見と予防法の開発をすることにより、薬剤の安全でより自由な使用に貢献することであろう。その際、薬剤の本来の作用を弱めないで、副作用を軽減できることが求められる。医療政策的な課題としては、すでに予防法が明らかになっている腎障害を最小限にするための対策も求められている。  近年、「尿蛋白陽性もしくは腎機能低下が持続するもの」を慢性腎臓病と定義し、その早期発見と、適切な治療を可能とする診療システム作りが強く求められている。その理由は、慢性透析患者数の増加が続くことと、慢性腎臓病では心血管系疾患の危険が高いこと、による。慢性腎臓病対策の進行は、薬剤性腎障害を含めた急性腎不全対策にもいくつかの影響を及ぼすことが予想される。例えば、慢性腎臓病に対置して急性腎臓病(実際に提唱されている名前は急性腎障害Acute Kidney Injury)という概念が導入されていることである。慢性腎臓病という概念の導入は、腎臓専門医というよりは、非専門医や国民を対象に想定されており、「名称も、診断基準も、腎機能評価も、分かりやすさが優先」されている。急性腎障害についても、同様のことが求められる可能性がある。また、慢性腎臓病対策では腎機能を血清クレアチニン値やクレアチニン・クリアランスではなく、GFRとして表記することとなる。急性腎障害の場合の腎機能の表現の仕方、薬剤の添付文書における腎機能表現にも影響を及ぼすと思われる。今後の薬剤性腎障害対策を進める上では、慢性腎臓病対策の動きを理解しておくことが必要である

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© 2007 日本毒性学会
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