日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: SY5-3
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創薬・育薬を目指したトキシコロジー教育の新たな構築
獣医学と毒性学(トキシコロジー)
*藤田 正一
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キーワード: 獣医学, 教育, 環境保全
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抄録
獣医学のカバーする領域はきわめて広く、動物の健康維持、疾病の治療、予防、制圧、畜産製品の安全性の確保、アニマルセラピー、ヒューマン・アニマル・ボンドへの貢献、基礎医学、人獣共通感染症、公衆衛生、野生生物の環境保全など、広範な分野への貢献が期待されている。そして、これら全ての分野に毒性学は何らかの形で関連してくる。 例えば、動物の健康維持については、誤食誤嚥や、汚染飼料による中毒、獣医薬による副作用、予防や肥育に使用された抗生物質による耐性菌の問題、環境汚染物質の人と野生動物への影響などが問題となる。公衆衛生学的な観点から、乳肉に残留する獣医薬、汚染物質や添加物の混入による食の安全の問題、ペットなど人と接触する動物の外寄生虫薬の人に対する影響、さらに、あらゆる医薬品や農薬、その他の化学物質の開発に動物実験が必要とされ、中毒症状の診断や、病理学的考察が獣医師に要求される。人獣共通感染症の撲滅については、人の病気を治療するのみでは病気を根絶できないのは当然で、病原体を媒介する動物の健康維持や駆除が問題となり、獣医師が関与するが、医動物の駆除に関しては、「環境保全のため」と「人の健康のため」との矛盾点(例えば、マラリアを媒介する蚊のDDTによる駆除)についても考察が必要である。 抗生物質を例にとると、日本には統計データがないが、北欧では、人に使用される抗生物質の量に比較して、家畜、家禽、養殖魚などの動物に使用される量は、3倍ほどになる。人薬の動物薬としての使用や環境への漏出も考慮に入れて創薬を考える必要があるのは当然で、耐性菌問題や、これらの乳肉への残留が人体にどのような影響を及ぼすかも検討する必要がある。毒性学教育はまた、人の作り出す化学物質の人、動物、生態系への悪影響を如何に軽減、予防・回避するか、事故の場合の誠意ある対応など、良心の教育も大切である。
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© 2007 日本毒性学会
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