抄録
【目的】必須アミノ酸の多くを輸送するアミノ酸トランスポーターのひとつであるL-type amino acid transporter 1(LAT1)は細胞への栄養供給に重要な役割を果たしている。なかでも癌化した細胞では必須アミノ酸が増殖能を維持するに必要であり、細胞内への取り込みにはアミノ酸トランスポーターが重要な役割を果たしている。我々はアミノ酸トランスポーターの一つであるLAT1が悪性腫瘍細胞で高発現していることを報告してきた。そこで本検討では細胞増殖を抑制することが知られている物質のひとつである2-amino-bicyclo-(2,2,1)-heptane-2-carboxylic acid (BCH)を、LAT1を輸送阻害させることによる癌細胞における作用をin vivoおよびin vitroによる検討に加え、LAT1をノックアウトしたマウスを作製し、発癌の影響をN-butyl-N- (4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN)にてそれぞれ検討した。【方法】T24細胞にBCHを添加後、細胞増殖能の検討を行った。BBN誘発膀胱癌ラットに浸透圧ポンプを用いて局所デリバリーを2週間行った。ノックアウトマウス(+/-)および交配系C57BL/6J(B6)の6週齢雄マウスに対し8週間0.05%BBNを飲水投与後、24週齢にて膀胱剖出後の検出を行った。【結果】in vitroでの細胞増殖能に加え、in vivoにおいても癌の発生能の低下が認められ、さらにLAT1ノックアウトマウス (+/-)において(+/+)に比較し発癌率の有意な減少が認められた。得られた(+/-)マウスの腫瘍については細胞の増殖・分化が抑制していた。(-/-)型においては胎生致死を認めた。【総括】アミノ酸トランスポーターLAT1を阻害することにより発生した癌の増殖能を抑制するだけでなく、ノックアウトすることにより、(+/-)型においても癌の抑制が認められたことから腫瘍の癌の発生においてアミノ酸トランスポーターが必須であることが示唆された。