抄録
【目的】
アルカリフォスファターゼ(ALP)は臓器障害時に血中へ逸脱し、血漿中の活性が上昇することから、一般毒性試験で頻繁に測定されている。しかし、一般毒性試験のルーティン検査では活性上昇の由来臓器を特定できず、その解釈に困難を伴うケースが多い。更に、明らかな臓器障害がみられない場合でも血漿ALP活性が上昇する場合がある。したがって、アイソザイム分析は極めて有用な方法と考えられる。今回、ICRマウスの血漿ALPについて、分離が良好なポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法を用いて検討を行った。
【材料及び方法】
1) ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法(アルフォー、3mA、80分、インディゴブルー染色:常光)を用い、ICRマウスの臓器抽出ALP及び血漿について、レバミゾールや抗小腸ALP抗体処理などの方法を用いて血漿中の各ALPアイソザイムを同定した。 2) 本法を用いて背景データを採取した。3) マウスは採取できる血液が少ないため、評価可能な試料の最小量について検討した。
【結果及び結論】
1) 無処置ICRマウスの血漿中には主に骨ALPがみられ、加齢により減少する傾向にあった。2) 一方、胆管結紮モデルでは肝ALPが著増した。また、濃縮ゲル内の発色(高分子ALP)がみられ、レバミゾール処理に抵抗性を示したことから小腸型ALPが含まれると考えられた。3) 試料はノイラミニダーゼによる前処理が必要で、評価可能な最小量は14μLであった。 4) これらのことから、本法は毒性試験に適用可能であり、レバミゾール処理と併用することにより臓器毒性の有無評価に極めて有用と考えられた。