抄録
医薬品における代謝物の非臨床安全性評価については、現在本邦にガイドラインはなく、いわゆるケースバイケースで対応されているのが現状である。基本的な考え方としては、(1)動物で認められない代謝物がヒトで生じている場合、(2)ヒトと動物の代謝物の生成割合が異なり、ヒトで多く生成する代謝物がある場合(動物試験における投与量から安全性を担保できない場合)、(3)薬理作用や毒性が極めて強いと考えられる代謝物が生じる場合などには安全性の確認が必要と考えられる。一方、このような場合でも、当該代謝物が既知の物質であり、安全性プロファイルが明らかな場合や当該代謝物に薬理活性がないと判断される場合や、体内における生成量や動態量が極めて低いと考えられる場合には安全性の確認が不要な場合もあり得る。
2005年6月にFDAから代謝物の安全性評価に関するドラフトガイダンスが出されたことを受け、本邦でも代謝物の安全性評価についての関心が高まってきている。今回の発表では、今までに産・官・学で議論を行ってきた内容をふまえた上で、代謝物の安全性評価に対する現状について述べたいと考えている。また、代謝物の安全性評価に対する疑問点について、Q&A形式で解説を行いたいと考えている。