抄録
安全性評価研究会の機関誌(年刊)でもある「毒性質問箱」は、本年夏には第10号が刊行される。この10年間に、医薬品を中心とした安全性試験に関連する数多くのQ&Aが本書に掲載されており、会員・読者の方々の日々の試験・研究業務に大いに役立っていると信じている。寄せられる質問は、発刊毎に新たなものが登場しており、開発候補医薬品が多様であることを裏付けることとなっているが、一方、繰り返して寄せられる質問も少なくない。そのような質問は、経験豊富な毒性担当者には“常識”と思われるような基本的な内容から、長年の経験をもってしても解決できずに未だ議論され続けているものまで多岐にわたっている。しかし、これらの多くは最低限必要な基礎的な知識の範疇に入る。このような基礎的な事項は、先輩から伝授されたり、各人が書物から学ぶような事項かも知れない。しかし、昨今の非臨床開発現場での事情はそのようなナレッジの積み重ねや水平展開を十分に実施することを許さない状況も見え隠れする。その結果として、現場で実際に実施されていても共有化された情報になっていなかったり、本来は忘れてはいけないような事項が後進に伝えられないまま漏れ落ちて解決できないまま放置されたりしている。そして、「いまさら人に聞けない疑問」として存在していると思われる。
本ワークショップ第1部では、以下の4点にフォーカスし、基礎的な事項であることを再確認しつつ、最新の情報を加味することでQ&Aをより充実させ、活発な議論を展開したい。
「採血」・・・麻酔、保定、採血部位が検査値に与える影響の総決算
「投与」・・・投与容量、投与という物理的な影響と薬剤による影響などの鑑別などについての諸問題
「媒体」・・・難溶性物質開発に使用される媒体や経口投与の媒体候補に関する諸問題
「ストレス」・・・ストレスを引き起こすこととストレスによって引き起こされることに関する諸問題