日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: EL-1
会議情報

教育講演
ミニブタの生物学特性とトキシコロジーへの応用
桑原 正貴
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ミニブタは解剖学的・生理学的特性が他の動物種と比較してヒトと多くの類似点を有していると考えられてきたことから,医学・生物学を中心とした研究分野で有用な実験動物として注目を集めてきた。とりわけ,心血管系や皮膚研究領域における医薬品開発や安全性試験の場においては,現在,既に多くのミニブタが利用されている。さらに,このところブタやミニブタが再び注目を浴びるようになった背景として,動物愛護の観点から問題の少ないことに加え,遺伝子改変やヒト並みの疾患モデルとしての開発がブタで可能になってきたことが挙げられると思われる。
世界的にはこれまでに約20系統以上のミニブタが開発されているが,世界で最も使用されているミニブタはゲッチンゲン系とユカタン系ミニブタである。本邦では,クラウン系とNIBS系ミニブタの生産および使用頭数が増加しているものと推察される。系統によって特性に多少の差異も認められるが,トキシコロジー分野での使用に際して必要となる様々な要件は満たしている。ミニブタは広い範囲の薬剤や化学物質に感受性を有することが明らかになってきているし,その投与経路に関しても一般的に使用される全ての経路が利用可能である。そして,薬物の代謝・動態に関してもヒトとの高い類似性も認められている。
われわれの研究室では,医薬品開発において現在避けては通れない,薬物誘発性QT延長症候群に関しても研究を進めてきている。その中でミニブタを使用した電気生理学的および分子生物学的検討も実施している。これらの研究から得られた最近の成果も報告できればと考えている。
医薬品開発における非臨床試験に関するOECDのガイドライン409にもミニブタは非げっ歯類動物の1つとして認められており,今後,薬物作用機序や毒性発現機序を解明する上で益々有用な実験動物としての価値が高まると考えられる。しかしながら,成体のミニブタの体重は未だに20~30 kgあることから,これまでの遺伝育種学的な方法に加えて遺伝子操作を利用したミニブタの更なる小型化も重要な課題であろう。

著者関連情報
© 2009 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top