日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S4-1
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毒性オミクス
Percellomeトキシコゲノミクスプロジェクトの進捗-インフォマティクス構築へ-
*菅野 純相﨑 健一
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抄録
 毒性学の近代化への現実的対応として、毒性学的トランスクリプトーム研究、即ちトキシコゲノミクス研究を開始した。これは、ブラックボックスの中身を遺伝子発現カスケードの面から解明する事により生体反応メカニズムに基づいた分子毒性学を構築する事を目的とする。その際、毒性を見落とさない「網羅性」を確保する必要性から、全遺伝子のトランスクリプトーム情報の中から生物学的に有意と判断される反応カスケードを抽出するアプローチを取る事とした。これは丁度、電子顕微鏡が世に現れた時の状況に準えることが出来る。光学顕微鏡では見えない「もの」が見えるようになるわけであるが、それが何であるかは、光学顕微鏡像を参照しても簡単には分からない。目指すトキシコゲノミクスと従来の毒性学は電子顕微鏡と光学顕微鏡の関係にあり、実用化に向けての教科書作成に当たる基礎研究が必要である。その為には複数の実験から得られる大量のデータを蓄積し横断的な解析を加えることが必須である事から、マイクロアレイデータの標準化と互換性確保の為に細胞1個当たりのmRNAコピー数を得るPercellome法を開発した。
 現在までに、約100種類の化学物質によるマウス肝の初期応答Percellomeデータに、反復投与、発生毒性、吸入毒性、多臓器連関性データを加え、延べ3.5億遺伝子情報からなるPercellomeデータベースを得た。Percellomeデータは、基本的に時間、暴露用量、遺伝子発現量の3軸からなる3次元表示データにより構成される。解析にはこの3次元波動面の特徴抽出という独創的な方法を採り、解析ソフトウエア群は全てオリジナル(一部は特許を取得)であり、高精細且つ高再現性を実現している。最終的に「どのネットワークがどの毒性と直結するか」という動的な因果関係を導き出すインフォマティクスを構築する事で毒性予測精度の格段の向上を目指すものである。
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© 2009 日本毒性学会
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