日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-1
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
ラットの腹部大動脈から採取した初期及び後期血液の成分の違いが臨床病理学的評価に及ぼす影響
*伊藤 辰哉三浦 幸仁堤 秀樹齊藤 遼太久保 千代美岩田 良香高井 了豊田 直人千葉 修一
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抄録
【背景及び目的】臨床検査値は,動物種を問わず採血部位による差があることが知られている。ラットの全採血では,採血初期に中枢血管の血液,後期に末梢からの循環血液が採取されるため,測定値に影響を及ぼすことが予測される。しかし,採血量に関して臨床病理学的評価項目を網羅的に検討した報告が少ない。よって,各測定値に対する影響について評価し,影響を及ぼさない採血量の目安を求めた。 【方法】10週齢のラット(Crl:CD(SD))を用いた。イソフルラン麻酔下で腹部大動脈より翼状針を刺入し,2 mLずつシリンジを換えながら採血し,採血初期から後期への変化を確認した。 【結果】採血初期と後期を比較した場合,血液学的検査ではWBC,各白血球分画実数,RBC,HGB及びHCTが減少した。血液凝固検査ではFibが減少し,APTTが短縮傾向を示した。血液化学的検査ではAST,ALT,ALP,TC,TG,TP,Alb及びCaが減少し,血糖,K,IP及びClが増加した。リンパ球サブセット検査ではT cell数,B cell数及びNK cell数がリンパ球実数値の減少に伴い減少したが,比率に顕著な変化はなかった。著しい影響を受けなかった採血量は雄で8 mL,雌で6 mLであり,採血時体重の約2%に相当した。 【考察及び結論】血球数の減少は急激な循環血の消失による白血球の毛細血管内への吸着・滞留,及び細胞間質液等の混入による希釈と考えられる。血液化学的検査において減少した項目は細胞間質液等の流入による希釈,増加した項目は細胞内液成分の流入によるものと考えられる。なお,血糖の増加については末梢血液の流入による影響,及び大量失血時のストレスによるものと考えられる。以上のことから,採血時体重を考慮し採血量を一定にすることで,精度の高い臨床病理学的検査値が得られ,より正確な毒性評価に寄与できるものと思われる。
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© 2009 日本毒性学会
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