日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-13
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
麻酔ラットにおけるカルシウム塩沈殿物の静脈内注入による肺動脈塞栓と用量依存的心肺機能障害
*豊島 茂樹澤本 修中川 貴善鈴江 昌展早見 康高恵美 伸男倍味 繁中島 芳文
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キーワード: 肺動脈塞栓, 心肺機能
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抄録
静脈注射用混合剤の調製の際に、配合変化により結晶の沈殿物が析出する場合がある。カルシウム塩の沈殿物が誤って静脈内に注入された場合に、呼吸困難と肺動脈塞栓が生じたとの報告がある。しかし、沈殿物の投与量と心肺機能との関係についてはこれまで検討されていないことから、今回、カルシウム塩の試薬をラットの静脈内に注入し、心肺機能に及ぼす影響を検討した。麻酔ラット(n = 5)の静脈内にリン酸水素カルシウムの懸濁液(CaHPO4、10、30、60 mg/kg)、炭酸カルシウムの懸濁液(CaCO3、10、30、60 mg/kg)又は生理食塩液を注入し、呼吸数、心拍数、動脈圧、血液ガスを投与後90分まで測定した。測定終了後、肺を採取し、病理組織学的検査を行った。CaHPO4の注入により、30及び60 mg/kgの投与量では動脈圧及び動脈血酸素分圧(PaO2)が投与量に依存して低下し、60 mg/kgでは5例中3例が死亡したが、10 mg/kgでは有意な変化はみられなかった。またCaHPO4の投与量依存的に、肺の重量が増加し、病理組織学的にはいずれの投与量でも結晶による肺微小血管の塞栓が認められた。他の項目にCaHPO4投与による明らかな変化はみられなかった。CaCO3でも同様の影響がみられたが、CaHPO4でみられた影響と比べて軽度であり、死亡例も認められなかった。以上、カルシウム塩沈殿物の静脈内注入により、肺動脈塞栓と用量に依存した心肺機能障害が認められた。
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© 2009 日本毒性学会
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