日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-35
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
4,6-Dinitro-o-cresol (DNOC) 単回投与によりラットに誘発される精子形態異常の発現過程の解析
*高橋 研明間 聡史山口 悟大塚 亮一武田 眞記夫大沼 彩高橋 尚史桑原 真紀青山 博昭寺本 昭二
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抄録
DNOCを雄ラットに5日間連続強制経口投与すると,精細管上皮のステップ19精子細胞においてミトコンドリアの部分的消失が引き起こされる。この異常精子細胞は,精細管上皮から放出されて精巣上体の中を移動する間は中片部遠位端において軸糸の外側粗大線維が露出するpeeled精子として観察され,精巣上体尾部に到達した後その異常の型をtailless精子に変化させる。これまでの実験では,5日間投与の翌日までに精細管上皮と精巣上体頭部において異常精子細胞とpeeled精子がそれぞれ出現することが確認されているが,投与直後から異常精子細胞の出現に至る過程を精査するためには,初期変化とそれに続く変化が重複して発現する反復投与実験モデルではなく,単回投与後の毒性発現過程を観察する必要があると考えられる。今回我々は,反復投与によって毒性が発現する15 mg/kgまたはその2倍の30 mg/kgのDNOCを雄ラットに単回強制経口投与し,投与後1,5,7,および11日に精巣上体の頭部,体部および尾部から精子を採取して位相差顕微鏡下でその形態を観察し,peeled精子の出現頻度を比較した。反復投与毒性量である15 mg/kgを単回投与されたラットは,投与後いずれの時期にも,精巣上体のいずれの部位においてもpeeled精子の増加を示さなかった。一方,30 mg/kg投与群では,16匹中1匹が投与翌日までに死亡したが,耐過した動物ではpeeled精子の頻度の有意な増加が,時期および部位特異的に観察された。Peeled精子の増加は投与後5日の精巣上体頭部にまず認められ,7日には頭部と体部の両方,さらに11日では精巣上体尾部に限局して認められた。この結果から,単回投与によってもDNOCの精子毒性が発現することが明らかとなり,この実験モデルを用いることによりDNOC誘発性精子形態異常の発現メカニズムを新たな時間軸に沿って解析することが可能となった。
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© 2009 日本毒性学会
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