抄録
β2-microglobulinは自己免疫疾患,悪性腫瘍,肝疾患などの腎前性疾患によって血中濃度が上昇し,近位尿細管再吸収機能の低下により尿から血液への再吸収が滞るため,その尿中濃度が上昇することが知られている.
β2-microglobulinはPredictive Safety Testing Consortium(PSTC)が新たに提案した腎臓障害バイオマーカーの1つで,米国食品医薬品局(FDA)及び欧州医薬品審査庁(EMEA)により前臨床試験の毒性評価に有用であることが承認された.
我々は,自社で開発・製造しているラット β2-microglobulin測定キット(enzymeimmunoassay)を用いて,尿中 β2-microglobulinを測定するに際し,その定量性能に影響を及ぼすと懸念される種々の因子について検証した.今回,尿中の塩,糖,タンパク質,ヘモグロビン,pH並びに飼料あるいは糞の混入が定量性能に及ぼす影響を検討した.また,尿検体の長期保存及び凍結融解における安定性を確認した.