日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-137
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医薬品,新規化学物質と,オミクス等の安全性評価
アルデヒド脱水素酵素(ALDH)2によるプロピオンアルデヒドの代謝
*山口 哲右小山 倫浩Thi Thu Phuong PHAM川本 俊弘
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抄録
[背景・目的]エタノールから酢酸への代謝にはアルコール脱水素酵素、MEOS、カタラーゼ、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)2が関与し、このうちアセトアルデヒドを酢酸に代謝するALDH2が重要な役割を担っている。日本人の約半数はALDH2が不活性化している(ALDH2不活性型)。アルデヒド類のプロピオンアルデヒド(PA)がALDH2により代謝されることを確認し、ミトコンドリア分画(Mt)・サイトゾール分画(Cyt)における低濃度(50mM)と高濃度(5mM)のPA濃度の特異的活性を検討した。
[方法]10週齢、雄の野生型マウス(Aldh2+/+)とALDH2ノックアウトマウス(Aldh2-/-)からの肝からMt・Cytを抽出した。PA濃度を低濃度(50mM)と高濃度(5mM)としたときのAldh2+/+Aldh2-/-のMt・Cytにおける特異的活性測定を行った。また、Aldh2+/+Aldh2-/-のMt・Cytにおける活性染色を行い、活性染色と同じゲルを用いてウエスタンブロッティング法によりALDH1・ALDH2を同定した。
[結果]低濃度(50mM)のPAにおいて、Aldh2-/-のMtに比べてAldh2+/+のMtでは、特異的活性は14倍と有意に高値を示した。Aldh2-/-のMtに比べてAldh2+/+のCytでも、特異的活性は3倍と有意に高値を示した。高濃度(5mM)のPAにおいて、Mt・Cytともに、Aldh2+/+Aldh2-/-の特異的活性には有意な差は認めなかった。活性染色においてAldh2+/+のMtで認めたpI 6.1- 6.2付近のバンドは、ウエスタンブロッティング法からALDH2と同定した。また、Aldh2+/+とAldh2-/-両者のCytに認めたpI 7.9- 8.5付近のバンドはALDH1と同定した。
[考察]本研究から、低濃度のPAは主としてALDH2により代謝されることが明らかとなった。ALDH2不活性型である低濃度のPAを取り扱う就労者は、PA曝露による健康障害の可能性を考慮する必要がある。
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© 2009 日本毒性学会
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