抄録
[目的]
我々は、これまでに経口投与によるin vivo光毒性試験法を検討してきた。その中で、8-メトキシソラレン(8-MOP)、塩酸ロメフロキサシン(LMFX)および類似化合物で光毒性を確認している。今回、これらとは構造の異なる光毒性物質、クロルプロマジン(CPZ、フェノチアジン系)、フロセミド(FM、スルホンアミド系)およびベンゾ[a]アントラセン(BaA、多環芳香族炭化水素)を加えて比較した。
[方法]
5週齢のSD系雄ラットに、8-MOP(8 mg/kg)、LMFX(80 mg/kg)、CPZ(100 mg/kg)、FM(1000 mg/kg)およびBaA(200 mg/kg)を単回経口投与後、UVAとして10 J/cm2の紫外線を照射し、照射後2、24、48および72時間に皮膚反応観察(Draize法)および耳介厚測定を行い、光毒性を評価した。また照射後72時間の判定後、背部皮膚および腹部皮膚片を採取し、小核観察を行った。
[結果および考察]
8-MOP投与群では、照射後24時間から経時的に増強する皮膚反応および耳介の肥厚が観察された。LMFX投与群では、照射後2時間から皮膚反応および耳介の肥厚が観察されたが、経時的に軽減する傾向にあった。BaA投与群では、照射後2時間から皮膚反応および耳介の肥厚が観察された。CPZおよびFM投与群では、皮膚反応および耳介の肥厚を認めなかった。
小核観察では8-MOPおよびLMFX投与群で、小核を有する表皮細胞の出現頻度が増加したが、CPZ、FMおよびBaA投与群では変化はなかった。
以上から、本条件で、多環芳香族炭化水素のBaAの光毒性が検出できることを確認した。CPZおよびFMは、試験方法の検討が必要であると考えられた。また、8-MOPおよびLMFXでは小核観察による遺伝毒性も検出が可能であり、動物愛護の観点から光毒性試験と小核試験の併用が有用と考えられた。なお、BaAは皮膚損傷によって小核観察で陰性となった可能性があり、複数用量の設定により評価が可能であると考えられた。