日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-9
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一般演題 ポスター
フタル酸ジヘプチルのラット90日間混餌投与による肝前がん病変形成機序
*鈴木 和彦谷合 枝里子嶋本 敬介小野 敦林 仁美Wang Liyun大石 巧三森 国敏渋谷 淳
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キーワード: 肝臓, フタル酸エステル
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抄録

【はじめに】フタル酸エステルの一種であるフタル酸ジへプチル(DHP)をラットに高用量で28日間強制経口投与すると、精巣萎縮とともに肝臓でGST-P陽性肝細胞巣が増加し、酸化性ストレスを介した遺伝毒性機序による肝発がんイニシエーション活性の可能性が推察されていることから、PPARαアゴニストとは異なる機序の肝発がん性が示唆される。一方で、DHP による肝発がん性へのPPARαアゴニスト活性を介した肝発がん作用の影響は明らかでない。【方法】6週齢のF344ラットに最高濃度を20,000 ppmとして公比2の割合で無処置対照を含む9段階の用量でDHPを90日間混餌投与し、肝前がん病変形成にかかる分子発現の用量反応性について検討した。【結果】5,000 ppm以上で体重増加抑制、10,000 ppm以上で肝相対重量の増加を認め、5,000 ppm以上で肝細胞の腫大、空胞変性が濃度依存的に重篤化した。GST-P免疫染色では1,250 ppmから陽性単細胞が増加し、200μm径を超える陽性巣の数および面積は5,000 ppmより増加した。Real-time RT-PCRでは、α2マクログロブリン(α2M)の発現が10,000 ppm以上で増加したが、peroxisomal bifunctional enzyme (PBE) の発現は投与により変化しなかった。また、10,000 ppm以上でGADD45γの発現低下とbcl-2の発現増加もみられた。【考察】PPARαアゴニストでは精細管萎縮と共に肝細胞の好酸性化を伴う肥大が生じるが、今回の明らかな体重減少を伴う用量を含むDHPの90日間混餌投与ではそれらの変化は明らかではなかった。一方、高用量群での前がん病変の出現増加には遺伝子修復機構が抑制された状態でのG1/S期の進行やアポトーシスの抑制機序の関与が推察された。また、肝臓でのPBEの発現増加を示さなかったことより、その肝発がんにはPPARαアゴニスト活性を介した肝発がん作用が関与しないと推察された。

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© 2011 日本毒性学会
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