日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-45
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一般演題 ポスター
血管平滑筋細胞遊走と血管リモデリングにおける銅トランスポーターATP7Aの新規役割
*芦野 隆Sudhahar Varadarajan浦尾 紀文押川 仁Gin-Fu ChenRonald D. McKinney深井 真寿子深井 透
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抄録

必須微量金属である銅は、生命活動に必須な種々酵素の活性中心として機能する。一方で、細胞内における生理的濃度以上の銅の蓄積は、酸化ストレス亢進の要因となり、血管リモデリングやアテローム性動脈硬化症の発症に関与することが示唆されている。血管リモデリングは、血小板由来増殖因子(PDGF)による血管平滑筋細胞(VSMC)遊走が重要な役割を担っている。しかしながら、VSMC遊走における銅の関与は、依然不明である。本研究において、マウス大腿動脈ワイヤー傷害モデルを用いた解析により、傷害血管の新生内膜部位における銅トランスポーターATP7Aの高発現およびATP7A変異型マウスにおける新生内膜肥厚抑制が認められた。そこでPDGFによるVSMC遊走におけるATP7Aの役割について、さらに詳細な検討を行った。PDGF刺激によるVSMCの遊走能は、ATP7A siRNA処置により有意に抑制され、さらにPDGF刺激により通常トランスゴルジネットワークに局在するATP7Aが、リーディングエッジの脂質ラフトに移行した。細胞遊走は、Rhoファミリー低分子Gタンパク質によるアクチン繊維形態の制御が重要である。PDGF刺激により、Rhoファミリーの1つRac1とATP7Aがリーディングエッジで共局在し、さらにATP7A siRNA処置により、PDGFによるRac1のリーディングエッジへの移行およびラメリポディア形成と細胞伸長が抑制された。ATP7Aは本来、分泌性銅含有タンパク質への銅供給を担う。そこで、血管細胞外基質構築に関与する銅含有タンパク質リジルオキシダーゼ(LOX)に注目したところ、脂質ラフトにおけるLOX前駆体(Pro-LOX)の存在と、PDGF刺激による脂質ラフトのPro-LOXの減少が認められた。以上の結果から、ATP7AがRac1のリクルートメントを介したラメリポディア形成とPro-LOXへの銅の供給を介して、VSMC遊走と血管リモデリングに関与していることが明らかとなった。

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© 2011 日本毒性学会
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