日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-48
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一般演題 ポスター
カニクイザルにおけるクレアチンキナーゼ検査系の検討
*大藤 圭子1片貝 祐子1加藤 美代子1藤本 浩二1揚山 直英2
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抄録

『目的』クレアチンキナーゼ(CK)は、CK-MM、CK-MB、CK-BB、の3種類のアイソザイムが存在する酵素で、CK-MMは骨格筋に、CK-MBは心筋に、CK-BBは脳に多く存在する。ヒトではCK-MBの測定は、急性心筋梗塞の診断上重要な診断指標となっている。一方、ヒトに近縁なサル類を用いた心疾患に対する治療法開発研究が盛んな昨今において、CK等の確実な診断指標が求められている。今回我々は、カニクイザル心筋梗塞モデルの血清中CK-MB活性の測定を試みた。 『方法』正常なカニクイザル51頭(4~22歳)とカニクイザル心筋梗塞モデルの血清を用い、CK活性およびCK-MB活性(免疫阻害法)を測定した。心筋梗塞モデルについてはCKアイソザイム(電気泳動法)も測定した。 『結果』正常なカニクイザルのCK活性値は213~1460IU/l、CK-MB活性値は19~95IU/lであった。また、心筋梗塞モデルにおいては梗塞後CK活性値が19240IU/l、CK-MB活性値が396IU/lと高値を示した。CKアイソザイムではCK-MMが94.2%と高い比率を示した。 『考察』ヒトでは、CK活性値が30~250IU/l、CK-MB活性値が25IU/l以下を正常値とし、急性心筋梗塞時にはCKおよびCK-MB活性が並行して上昇する。カニクイザルのCKおよびCK-MB活性値は、ヒトの正常値より高値を示す個体が多かったが、心筋梗塞モデルにおいて、ヒト同様にCKおよびCK-MB活性が並行して上昇した。CKアイソザイムでCK-MMの割合に高値が認められた原因は、術的侵襲による活性値上昇に起因するものと思われる。以上の事から、カニクイザルにおいてCK、CK-MBは診断マーカーとして有用である事が示唆された。今後、大規模コロニー内における疾患ザルの検出や、疾患モデルを用いた創薬研究への応用を進めたい。

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© 2011 日本毒性学会
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