抄録
【目的】
ヒトでの肝毒性を早期に検出あるいはモニターするためには血液等の非侵襲性サンプルの使用が必要である。我々はラットをモデルに肝毒性を惹起する薬剤を投与したラット血液を用いて網羅的遺伝子発現解析を実施し、血液中の肝細胞壊死マーカー候補遺伝子を抽出した(第37回日本トキシコロジー学会学術年会)。これらの遺伝子群について腎毒性物質による影響を検討し、肝細胞壊死に特異的なマーカーの探索を試みた。
【方法・結果】
ラットで肝細胞壊死の惹起が報告されているチアオセトアミド、メタピリレン、クマリン、ブロモベンゼンをCrl:CD(SD)ラットにそれぞれ単回および反復経口投与し、網羅的遺伝子発現解析を実施した。AST, ALT等に相関の高い遺伝子(Ifit2, Cxcl10等)を、肝細胞壊死マーカー候補遺伝子として報告した。
腎障害を惹起するゲンタマイシン、トリアムテレン、N-フェニルアントラニル酸、アロプリノール3, 7, 14日間反復投与後に、2-ブロモエチルアミン、フェニルブタゾン単回投与後3, 6, 9, 24時間後に剖検を実施した。PAXgene Blood RNA System (PreAnalytiX社)を用いて全血からRNAを抽出した。抽出したRNAについてGLOBINclear kit (Ambion社)によりグロビンmRNAを除去した後、Rat Genome 230_2.0 Gene Chip (Affymetrix社)を用いて遺伝子発現データを取得中である。これらの結果より肝細胞壊死マーカー候補遺伝子の肝臓特異性および肝/腎における壊死共通の変動について検討を行い報告する。
【謝辞】
本研究は厚生労働科学研究費補助金H14-トキシコ-001およびH19-トキシコ-001による。