日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-33
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一般演題 ポスター
ウラン誘発ラット腎毒性におけるkidney injury molecule-1(Kim-1)発現の病理組織学的検討
*伊藤 強今村 朋美池田 瑞代宍倉 恵理子大町 康田嶋 克史
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キーワード: ウラン, Kim-1, 腎毒性
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抄録
【目的】我々は第39回本大会において,ウラン投与ラット腎臓の近位尿細管上皮細胞にKim-1が発現誘導され,また尿中Kim-1が本病態の鋭敏な指標であるものの,重度腎障害を誘発する高用量群では発現が低いことを報告した。今回,ウラン腎障害におけるKim-1の局在と発現の用量反応性について詳細に病理組織学的に検討した。【方法】8週齢雄性Crl:CD(SD)ラットに硝酸ウラン(0.03㎎ - 4㎎/㎏)を筋肉内投与し,1日および3日後に解剖し,血液生化学検査と,腎臓についてHE,PAS,PTAH染色を,またKim-1,vimentin,PCNAの免疫染色を行った。【結果】ウラン投与3日後に,0.5㎎/㎏以上の投与群でBUN,CREが用量依存性に増加した。組織学的には主として髄質外帯外層の近位尿細管上皮において,1日後の1㎎/kg以上で孤在性壊死が,3日後の0.06㎎/㎏以上で孤在性壊死,凝固壊死が認められ,これらの変化の程度・範囲は投与量依存性に強くなった。PAS染色では尿細管刷子縁の短縮/消失が,PTAH染色により壊死細胞が濃青色に染色された。Kim-1染色では1日後の0.13㎎/kgで髄質外帯外層の尿細管単位で陽性細胞が増加したが,0.25㎎/㎏より高い投与量では凝固壊死細胞の増加に伴いKim-1陽性細胞は減少した。3日後の1㎎/㎏以上では,Kim-1陽性細胞の多くでvimentin,PCNAが陽性であった。【考察】ウラン誘発ラット腎障害では,障害がおこる髄質外帯外層を中心に近位尿細管上皮細胞に早期かつ細胞死が見られるより低い用量からKim-1が発現する。このことから,病態の進展により,生存している尿細管上皮細胞に加えて再生尿細管上皮細胞にもKim-1が発現するものと考えられた。
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© 2013 日本毒性学会
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