日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S3-3
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シンポジウム 3 日本薬理学会との合同シンポジウム「薬物乱用・依存性を考える」
依存性試験の現状と今後の展開
*藤原 淳飯野 雅彦若狭 芳男
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抄録
依存性試験については,日・米・欧のガイドラインあるいは指針,また,ICH M3(R2)ガイドラインにおいて試験法が記載されている.薬物依存の形成は中枢神経作用によることが分かっていることから,それらのガイドラインでは,まず初めに被験物質の受容体結合能や薬力学的プロフィール,行動薬理学的所見などを総合し,その結果,中枢神経作用を有すると考えられる場合には,精神依存性に関しては薬物自己投与試験,薬物弁別試験あるいは条件付け場所嗜好性試験などを,また,身体依存性に関しては退薬症候の観察試験を行うことが推奨されている.薬物自己投与試験では,レバー押しによる被験物質の自己投与回数から強化効果を検索する.薬物弁別試験では,被験物質の投与時に生じる内部感覚効果(弁別刺激効果)の類似性を代表的依存性薬物と検索する.場所嗜好性試験では,被験物質の投与時の効果と環境を条件付けたのち,その環境における滞在時間を媒体投与と比較することで被験物質の報酬効果を検索する.身体依存性試験では,被験物質を反復投与した後に休薬し,退薬症候を観察する.薬物自己投与試験ではアカゲザルとラットが,また,その他の試験では主としてラットが用いられる.薬物自己投与試験では,これまでアカゲザルが多用されてきたが,ICH M3(R2)ガイドラインではサルを用いる特別の事情が無い限りラットを用いるべきとする記載がみられることから,今後,精神依存性に関する試験ではラットの使用が増えると予測される.退薬症候観察では,これまでは主として体重及び一般状態の変化を観察してきたが,今後は,行動実験法による情動性の観察など,より詳細な退薬症候観察が求められる情勢にある.
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© 2013 日本毒性学会
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