日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: S5-4
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シンポジウム 5 抗がん剤の副作用対策の進歩
抗がん剤による悪心・嘔吐
*伊藤 善規
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抄録
抗がん剤治療においては副作用発現はほぼ必至であり,その中でも悪心,嘔吐,食欲不振は最も高頻度に発現し,患者が辛いと訴える代表的な副作用の1つである。抗がん剤による悪心・嘔吐は投与直後から発現し,24時間以内に治まる急性症状と24時間以降に発現する遅発症状,さらには,かつて嘔吐を経験した場合によく見られる予測性悪心・嘔吐がある。抗がん剤投与時における制吐対策として重要なことは,適切な薬剤を用いて急性ならびに遅発性の悪心・嘔吐を予防することである。近年,抗がん剤投与時における制吐対策に関するガイドラインが国内外の学会から報告されている。抗がん剤は催吐性リスクから高度,中等度,軽度および最小度の4つのカテゴリーに分類されており,高度ならびに中等度催吐性リスク抗がん剤投与時においては適切な制吐対策が特に必要となる。悪心・嘔吐の発現機序として,急性症状には抗がん剤により腸管クロム親和性細胞から遊離された5-HTおよびサブスタンスPによるそれぞれ5-HT3受容体およびNK1受容体の刺激,サイトカインの誘導が関与し,遅発性症状にはNK1受容体刺激およびサイトカインの誘導が主に関係すると考えられている。このため,催吐性リスクが高い抗がん剤が投与される場合の急性症状の予防として,5-HT3受容体拮抗薬,NK1受容体拮抗薬のアプレピタントもしくはそのプロドラッグのホスアプレピタントおよびデキサメタゾンが使用され,遅発性症状の予防としてデキサメタゾンおよびアプレピタントが使用される。一方,5-HT3受容体拮抗薬の一部には推奨用量が国内外で大きく異なるものがある。本シンポジウムでは5-HT3受容体拮抗薬の至適用量について,5-HT3受容体結合占有理論の観点から考察する。さらに,遊離された5-HTによる5-HT3受容体以外の5-HT受容体(5-HT2Bおよび5-HT2C)の関与についても報告する。
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© 2013 日本毒性学会
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