抄録
現在,ヒト細胞の安定的な資源を得る技術としてiPS細胞技術が注目されている.その用途として,治療用のみならず創薬開発への活用が着目されている.本発表では,iPS細胞由来心筋を用いた医薬品候補化合物の安全性評価を細胞外電位測定により実施する際,有効な要素技術について紹介する.今回得られた成果に基づき,ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた医薬品候補化合物の心毒性予測を行う際の適切な測定法について議論したい.我々は,ヒトiPS心筋を多電極チップに平面培養した状態で電極周辺に発生した細胞外電位を計測している.本発表では,①電極への適切な細胞播種プロトコールは,検体間,及び同一検体における拍動毎のデータ安定性に寄与することが示唆される.②温度変化は自律拍動周期と細胞外電位に影響することが示唆された.③強制刺激を適用することで,検体間と同一サンプルにおいて取得される拍動毎の細胞外電位の持続時間・振幅が,より安定することが示唆された.これらの結果と合わせて,作業効率を向上させる多検体同時測定も検討した.これらの要素を組み合わせ,医薬品候補化合物の探索・安全性評価研究において,ヒト心筋に発現し活動電位を形成する各種イオンチャネルや各受容体等に対する効果と薬剤の催不整脈性を効率的に評価する試験系を紹介する.