日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-71
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一般演題 ポスター
日用生活品に含まれる化学物質を対象としたグローバル環境暴露解析モデルの開発
*山根 雅之田川 直史川口 智哉西山 直宏
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抄録
化学物質の環境暴露評価においては,数理モデルを用いて河川水中の化学物質濃度を推定することが一般的である。既存の優れたモデルは,先進国を中心に報告されている。これらのモデルは,先進国に存在する豊富な実測の地理情報(特に河川流量)に基づき構成されており,実測の地理情報の蓄積が乏しい新興国には適用できない。我々は,このような地域の詳細評価を行うために,任意の国(地域)に適用可能でかつ扱いが簡単なグローバル環境暴露解析モデルの構築を目指し,インドネシア・ジャワ島を最初のターゲットに定めモデルを開発した。
本モデルは,河川流量を推定するHydro-BEAM法と化学物質の挙動を再現する多媒体環境動態解析モデルからなり,下水を経由して環境に排出される化学物質の河川水濃度を推測する分布型のモデルである。化学物質濃度の算出に不可欠な河川流量を,研究機関で公開されている誰でも入手可能な地理情報(降水量,落水線,標高,位置情報など)を用いて推定することが可能であり,任意の国(地域)への展開が可能な汎用モデルである。モデルの解像度は1×1kmであり,日~月単位で河川中濃度を算出できる。検討の結果,本モデルのアルゴリズムに従うと,ジャワ島は2190の水系に分割されることが分かった。これらの水系は実際の地図上の水系とよく一致した。また,河川流量推定値を入手可能な河川流量実測値と比較したところ一致性は良く,本モデルの推定精度が高いことが示された。暫定的に,下水道普及率0%としてジャワ島における直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)の河川水濃度を算出したところ,各メッシュにおける95 percentille値は,日本のそれよりも高くなる傾向があることが分かった。今後は,インドネシア以外の国(地域)にも拡大し,より汎用性の高いモデルに仕上げていく予定である
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© 2013 日本毒性学会
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