抄録
胃における毛球形成の意義及びその変動を調べることを目的として、Kbl:NZWウサギを用いた約20年間の生殖発生毒性試験(75試験、総動物数:妊娠母体 2702 例) データについて、毛球貯留動物数の実態を調べると共に、調査期間を3区分(1993~2000年:BG1、2001~07年:BG2、2008~11年:BG3)に分けて比較した。全期間における対照群と高用量群の毛球発現数/観察母体数(発現率)は前者で8/1354(0.6%)に対して、後者で49/1348例(3.6%)であった。高用量群における毛球貯留動物数の発現頻度は帝王切開に供した母体(0.5%)に比べ、流産(27.1%)及び死亡動物(13.8%)が高頻度であった。高用量群の流産動物では一般毒性の変化(糞量、体重および摂餌量の減少)が毛球を有しない動物に比べ毛球貯留動物で、投与期間を中心に重篤であった。同様な傾向はBG1とBG2の死亡及び流産動物に共通してみられたが、BG3では毛球の有無による糞量、体重及び摂餌量の変動の差は消失した。このような最新データの一般毒性に対する毛球貯留の影響を軽減させた原因として、空調機器の更新(飼育室におけるアンモニア濃度の低下)により生じた可能性が示唆された。