日本毒性学会学術年会
第40回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-176
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一般演題 ポスター
2-Amino-4-nitrophenolの雄ラットにおける28日間反復経口投与毒性試験の腎病変の経時的変化
*小林 俊夫大嶋 浩古賀 孝之松本 博士齋藤 文代寳珠山 五月
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キーワード: 腎臓, 発癌性物質, ラット
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抄録
2-Amino-4-nitrophenol(ANP)は,ラットを用いた13週間反復経口投与試験において,1000 mg/kg/dayの雌雄で腎臓の壊死及び鉱質沈着,発がん性試験において250 mg/kg/dayの雄で尿細管腺腫の発生率増加が報告されている。本研究では,ANPの短期間投与における腎毒性と腎発がん性の関係性を解析するために,28日間反復経口投与試験を実施し,腎病変の経時的観察及びマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現量解析を行った。方法としては5週齢の雄のSDラットに0(コーン油),150及び750 mg/kg/dayで強制経口投与し,1,7,14及び28日間投与後に解剖した。投与期間中は一般状態観察,体重測定を行い,解剖時に尿検査,血液検査,病理学的検査を行うとともに,Whole Genome Rat microarray (60K×8,Agilent)を用いて腎臓の遺伝子発現量解析を行った。その結果,750 mg/kg群で単回投与後に腎尿細管の壊死が認められ,クレアチニン及びBUNの高値が認められた。しかし,7日間投与後には尿細管の壊死は再生に転じており,血中の腎機能パラメータの変動は認められなかった。さらに28日間投与後には再生尿細管の発現頻度は低下した。このことから投与初期に傷害された尿細管は急速に修復されたことが示された。28日間投与後の腎臓遺伝子発現量解析では,がん化を示唆する遺伝子の発現変動は認められなかった。ANPの経口投与試験の結果,単回投与後に腎臓に重篤な病変が認められたが,28日間投与後には沈静化していた。しかし,13週間投与後には腎臓に壊死などの病変が報告されており,28日間投与試験で認められた病変が尿細管腺腫へ発展する可能性は否定できない。今後は他の腎毒性及び腎発がん性物質を用いた解析を進め,早期の遺伝子発現変動と腎発がん性を関連づけることを目指す。本成果は経済産業省からの委託研究「石油精製物質等の新たな化学物質規制に必要な国際先導的有害性試験法の開発」により実施されたものである。
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© 2013 日本毒性学会
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