抄録
【目的】 ナノマテリアルの安全性については未知の部分が多く、生体影響の評価については、試験法や評価基準などが定められていない。本研究では、酸化金属ナノマテリアルの物性について明らかにすると共に、in vitro 生体影響評価系としてヒト血球系細胞株THP-1を用いた評価系を用い、細胞毒性及び免疫応答について検討した。
【方法】8種類の酸化金属ナノマテリアルを対象として、懸濁液中での平均粒子径、粒径分布、ゼータ電位等を動的光散乱法にて測定した。ナノマテリアルをTHP-1細胞に曝露し、ATP法による細胞毒性の評価と、培養上清中のサイトカイン測定による免疫応答の検討を行った。
【結果と考察】 酸化金属ナノマテリアルの懸濁液中での平均粒子径は、164~407 nmであった。細胞毒性試験の結果、3種類のナノマテリアルで毒性が観察され、その強さはCuO, ZnO, NiOの順であった。細胞培養上清中のサイトカイン量は、CuO, ZnO, NiO曝露によりIL-8が増加し、その量は、ZnO曝露で最も高く、次いでNiO, CuOであった。CuOでは48hで24hに比べてIL-8量は減少しており、細胞毒性の影響が考えられた。一方、CuO, ZnO, NiO曝露によりTNF-α量には変化がなかった。他のサイトカインに対する影響についても検討中である。THP-1細胞は、ナノマテリアルにより細胞毒性を示すと同時にIL-8を放出したが、その量は細胞毒性の順とは異なっていた。以上より、ナノマテリアルのin vitro生体影響評価においても、免疫応答細胞を介する作用を併せて考慮する必要があると思われた。