日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-2
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シンポジウム 2 古くて新しい課題:重金属研究の新展開
メチル水銀の神経毒性におけるグリア性ATPとIL-6の役割
*小泉 修一篠崎 陽一
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抄録

グリア細胞は様々な脳機能の制御に重要な役割を果たすが、種々の脳疾患、例えば外傷性、炎症性、神経障害性疼痛、さらに神経変性疾患等では、これらの発症や慢性化に関与したり、逆に保護作用を呈したりすることが明らかとされつつある。このように、脳の生理・病態生理機能と密接に関係するグリア細胞であるが、その機能に対し種々の医薬品、化学物質、環境汚染物質等がどの様に影響するかに関してはほとんど知られていない。本研究では、グリア細胞がメチル水銀(MeHg)の高感度センサーとして機能していること、また、このグリア細胞が低濃度MeHgを感知することで、グリア細胞間及びグリア−神経細胞間のコミュニケーションが亢進し、MeHg障害の回避に繋がっていることを報告する。我々が明らかとした点は、(1)低濃度MeHgを感知したミクログリアはVNUT(vesicular nucleotide transporter)依存的開口放出によりATPを放出すること、(2)低濃度MeHgを感知できないアストロサイトは、ミクログリアのATP情報をP2Y1受容体を介してその情報を感知すること、さらに(3)アストロサイトのトランスクリプトーム解析により、ミクログリアの ATP情報を受容したアストロサイトはインターロイキン6(IL-6)を非常に強く発現することにより神経保護作用を呈すること、である。しかし、このようなグリア細胞の初動による神経保護作は、時にMeHg曝露の慢性化により神経傷害作用へとシフトする。グリア細胞の有する二面性フェノタイプについても考察する。

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© 2014 日本毒性学会
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