日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-4
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シンポジウム 2 古くて新しい課題:重金属研究の新展開
日本人の鉛・無機ひ素曝露評価
*吉永 淳
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抄録

 ヒ素と鉛は古典的な有害重金属として古くから知られてきたが、われわれ日本人がいま、これらにどの程度曝露しているのか、その曝露源として何があるのか、について意外と知られていない。
 従来は食物、大気、水が主要な重金属の曝露源と考えられてきたが、近年になってこれら以外に土壌粒子や室内塵からの経口曝露も考慮に入れる必要が明らかになっている。日本人小児の鉛曝露調査の結果、一日摂取量は約20μgであること、その半分が室内塵に由来し、土壌と食物がそれぞれ25%ずつを占め、大気はほとんど寄与しないこと等が見出されている。厚労省がおこなって来たトータルダイエットスタディとは食物からの摂取量推定値に大きな開きがあった。さらに小児の血中と環境媒体中鉛の安定同位体組成に関するケーススタディからも、室内塵が主要な曝露源である例を見出している。室内塵中鉛は何に由来するのか、現在も同位体分析や局所分析など各種分析手法を駆使して探索を続けているところである。
 一方、無機ヒ素(iAs)の摂取源は、従来考えられてきたとおり99%が食物である。マーケットバスケット調査によって、日本人成人のiAs一日摂取量は約20μgで、米とひじきがそれぞれ70, 30%を占めることが見出された。iAs濃度がきわめて高い食材であるひじきを摂食すると、一食あたり~200μgのiAs摂取量に達することもあり、iAs摂取量には大きな個人内・個人間変動がある。日本人のiAs摂取による発がんリスクを推計するためには、日本人の長期的なiAs摂取量代表値を推定する必要がある。モンテカルロ法を用いた確率論的推計を行った結果、中央値は19μg/日、95パーセンタイル値は59μg/日であった。米国EPAのOral Slope Factorを適用すると、日本人の日常的なiAs摂取による発がんリスクは無視できない大きさとなる。

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