日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S5-4
会議情報

シンポジウム 5 ワクチンの安全性評価
インフルエンザワクチンにおけるアナフィラキシーの現状・課題・展望
*庵原 俊昭
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの原因として、発育鶏卵由来のタマゴ成分が関与していると考えられていた。しかし、本邦のインフルエンザワクチンに含まれるオボアルブミン濃度は1ng/mlであり、アナフィラキシーを引き起こす濃度(600ng/接種量以上)ではない。2009年のパンデミック時にタマゴを食べてアナフィラキシーを起こす小児41人に、発育鶏卵由来インフルエンザワクチンを接種したが1人もアナフィラキシーを発症しなかった。
 2011/2012シーズンにおいて、2-フェノキシエタノール(2PE) を含むインフルエンザワクチンを接種した小児(主として3~5歳)は、2PEを含まないインフルエンザワクチンを接種した小児よりも高頻度にアナフィラキシーを発症した。アナフィラキシーを発症した小児は、インフルエンザワクチンに対するプリックテストが陽性であり、インフルエンザワクチンに対する高いIgE抗体を有しており、児から採取した好塩基球はインフルエンザワクチン刺激により活性化された。また、低濃度の刺激では、2PE入りインフルエンザワクチンの方が高い好塩基球活性化が認められた。以上の結果から、2PEがHAの構造をなんらか変化させ、結果として好塩基球や肥満細胞に付着した抗インフルエンザワクチンIgE抗体が架橋形成し、これら細胞を活性化させアナフィラキシーを誘発したと推論した。
 2012/2013シーズンから防腐剤を2PEからチメロサールに変更したところ、小児のアナフィラキシーの頻度は他のメーカーは同等となった。一方、インフルエンザワクチン接種後に腕全体が腫脹した小児では即時型のプリックテストは陰性であったが、インフルエンザワクチンに対する高いIgE抗体が検出された。次に小児のインフルエンザワクチンIgE抗体を測定したところ、2歳~5歳で高値を示し、その後低下する傾向が認められた。
 インフルエンザワクチン接種後のアナフィラキシーや腕全体の腫脹を予防するためには、IgE抗体を誘導しにくいインフルエンザワクチンの開発が必要である。
著者関連情報
© 2014 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top