日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S7-2
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シンポジウム 7 マイクロRNA の毒性研究への新しい展開
マイクロRNAの発現変動と医薬品副作用
*中島 美紀横井 毅
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抄録

 遺伝子発現を負に制御するマイクロRNAはさまざまな生命現象に関わっている。演者らはマイクロRNAが薬物代謝酵素シトクロムP450の発現や酵素活性を制御しており、医薬品の体内動態・ファーマコキネティクスをコントロールしていることを明らかにしてきた。一方で、マイクロRNAは薬効発現・ファーマコダイナミクスに関わっていることも徐々に明らかになりつつある。例えば、慢性骨髄性白血病治療薬イマチニブはBCR-ABL1チロシンキナーゼを選択的に阻害する薬理作用を有するが、白血病由来細胞内においてBCR-ABL1チロシンキナーゼの発現を抑制するmiR-203の発現を増加させることも、薬効発現に関わっている。また、スタチン系高脂血症薬はHMG-CoA還元酵素を阻害することで血中コレステロールを低下させるが、肝細胞や末梢マクロファージ中からコレステロールを排出するABCA1やABCB11などのトランスポーターの発現を抑制するmiR-33の発現を上昇させることも、血中コレステロール低下作用に関わっている。以上の背景から、マイクロRNAの発現変化が薬理作用のみならず、医薬品有害作用にも関与していることが十分考えられる。演者らはスタチン系高脂血症薬による横紋筋融解症の発症にマイクロRNAが関わっている可能性を考え、ヒト骨格筋由来RD細胞を用いた検討を行った。セリバスタチン処置によって明らかな細胞毒性が認められる以前の早い時間から、数十種類のマイクロRNAが発現変動しており、それらのマイクロRNAの標的遺伝子の解析から毒性発症メカニズムが推定された。また、ハロタン誘導性肝障害モデルマウスにおいて、血中ALT上昇が認められる以前の、投与後1時間という早期から免疫および炎症に関わる因子の発現を制御するマイクロRNAが発現変動しており、肝障害を誘発している可能性が示された。

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© 2014 日本毒性学会
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