日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-42
会議情報

一般演題 口演
生体リズムの攪乱による精巣機能障害の誘発
*三浦 伸彦大谷 勝己
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】現代社会はグローバル化が進み、それに伴い社会生活は24時間化してきている。労働現場での夜間勤務を伴うシフトワークは現代社会において欠くことのできない勤務形態であり、シフトワーカーの数は就労者の25%以上に達した。シフトワークによる疾患(発がん、肥満、高血圧など)の発症リスク増大が疫学的に報告され、シフトワークが及ぼす健康影響は注目すべき課題となっている。我々は生体リズムを攪乱させると精巣機能障害が生じることをマウスを用いた系で見出したので報告する。
【方法】雄性C57BL/6Jマウス(7週齢)を通常明暗条件(8:00-20:00照明)又はシフト明暗条件(2日毎に12時間明暗を逆転)で飼育し、開始して1, 3, 6, 9, 12週間後に解剖し精巣機能を調べた。生体リズムは赤外センサーを用いて活動量を測定することで評価した。また精巣機能の測定には精子運動解析システム(CASA)を用い、精巣上体尾部から得た精子の運動能及び精子数をはじめとして多角的に評価した。
【結果及び考察】マウスをシフト明暗条件で飼育すると約3日後から生体リズムが乱れ始め、通常明暗群で認められた暗期での活動量増加がシフト明暗群では消失した。この結果はシフト明暗が明らかに生体リズムを攪乱したことを示す。この様な条件下で調べた精巣上体尾部の精子数は、通常明暗群では週齢が増すにつれ性成熟に伴うと考えられる増加が認められたが、シフト明暗群では飼育3週間後までは増加傾向にあったものの6週間後から有意に減少し、12週間後には通常明暗群の約1/2となった。さらに興味深いことに、精子運動能は通常明暗群では12週間後まで約80%を維持していたが、シフト明暗群では飼育6週間後から12週間後まで有意に低下することを見出した。これらの結果は明暗シフトによる生体リズムの攪乱が精子機能を量的・質的に低下させることを示唆しており、シフトワークによる健康影響を考察する上での新たな基礎データとなると考えられる。

著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top